なぜ油性ボールペンにブルーブラックが無いのか?
みなさん こんにちは。
東京 五反田にあります、文具店tag五反田店の石川と申します。
突然ですが、
以前、当店のスタッフに、ふとこんな質問を受けたことがありました。
「油性のボールペンで ブルーブラック ってありましたっけ?」
?そういわれてみれば…ブルーブラックを採用しているのは水性やジェルのボールペンばかりです。
まさかと思い、メーカーのカタログを片っ端からひろげてみましたが、やはり油性は見当たりませんでした。
なんで?なんでなんで?
これは事件?陰謀?
そんな訳で今回の文房具豆知識は「なぜ油性ボールペンにブルーブラックが無いのか」について調べてみました。
やはり今回の件は製造している大元で聞くのが話が早いという事で、メーカーさんにその辺りの事情をお聞きしました。
お話しを伺ったのは、フリクションやアクロボールでおなじみ、株式会社パイロットインキ の 大久保課長です。
まず、御社では油性ボールペンで「ブルーブラック」を販売されていた事はあるのでしょうか?
「過去に油性ボールペンでブルーブラックインキは上市した事が有るそうです。
かなり前で当時を知る人が居ませんでした。」
なるほど。あった事はあったんですね。どれくらい前の事なんでしょうか?
「昭和の時代だそうです。」
昭和だと遡る事30年以上も前ですね。
今みたいに低粘度のなめらかインクなんて無い時代ですね。
「最近でいうと 三菱鉛筆さんはジェットストリームで少し前にブルーブラックをやっていましたね。」
ああ、そういえば三菱さんのジェットストリームで初めのころ販売されていたような…微かな記憶が。
でも何でパイロットさんではブルーブラックの製造販売をやめてしまったんですか?
「水性に比べて色の差別化が難しく、特に黒との差別化が困難なのと、それが理由で
販売数量が伸びないのが原因ではないかと思われます。」
たしかに。黒との差別化は難しいですね。
私も売場でボールペンを陳列する際に、黒の隣にブルーブラックを置くと、お客様が色を間違えて買っていかれるんじゃないかと少しヒヤヒヤします。
「油性ボールペンでは黒、赤、青以外の他の色も出ては消える状況が物語っています。
黒、赤、青、緑については、色というより単純に『黒との差別化』に必要で売れてい
るものと考えられています。」
黒は「本文」で、赤は「要点」「チェック」で使ったりしますもんね。色によって用途や役割が割り当てられている感じはあります。
「話は逸れますが、同じ青や赤でもメーカーによって色の違いが結構あります。パイロットの赤はよく『青系の赤』と言われていたのを思い出しました。」
水性やジェルのブルーブラックについても、筆記具メーカー各社で結構色味が違うのを見た事があります。でも「青系の赤」とは微妙な…。
ただそういった微かな違いで、メーカーの固定ファンが出てきたりするんですかね。
「モンブランのミステリアスブラックじゃないとダメ!」みたいな。
でも、そもそも何でブルーブラックって長い間人気を博しているんでしょうか?
「ブルーブラックインキは元々万年筆でタンニン酸を使って保存性を高めたものが、たまたまブラックインキだった事に由来しています。
特に公文書に於いて保存性の高いブルーブラックが使われるのは必然だったようにも思います。
また色彩心理学的でよく言われるのは、原色からトーンを落とす事で男性的→女性的になり、印象が柔らかくなることでしょうか。
書いた文章の表現が少しきつくても、ブルーブラックを使うと優しく見える効果が有ると思います。」
!そんな心理効果があるのに油性では人気が無いなんて、なんだか不思議ですね。
しかし実際のところ油性ブルーブラックについて、ユーザーからの問い合わせ、要望などはあるのでしょうか?
また、今後新たに製造、販売の予定はあるのでしょうか?
「時々ですが案としては出ているようです。」
ということは、今後はアクロボールでブルーブラックが発売されるなんて事もあるかもしれませんね。
興味深いお話でしたね。
大久保課長、ありがとうございました。
私も店舗のレジに立っていると、万年筆のインクやジェルボールペンのブルーブラックを選んで買っていかれるお客様をよく見かけますが、
「なんでブルーブラックを選ばれるのかな?」と考えたりすることがあります。
理由は人それぞれですが、ブルーブラックならではの「軽さ」だったり「やさしさ」だったり、はたまた「ノスタルジー」を求めて買っていかれる
方も案外と多いのかなと想像してしまいます。
また、油性のボールペンを選ばれるお客様は仕事で使用されている方も多いように感じますので、「明確さ」に重きを置いてらっしゃるのかもしれませんね。
そのあたりに今回のテーマの答えが隠れているように感じます。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。
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