インク工房と私

こんにちは、ひさしぶりの登場のデルタの前田です。さてさて、久しぶりのブログ担当ということで、何を書こうが迷ったのですが、今年も7月に当店で開催いたしましたセーラー万年筆さんのインク工房のことについて少しお話したいなと思います。

 インク好きの方々はよくご存知だと思いますが、セーラー万年筆の石丸 治(いしまる おさむ)氏がインクブレンダーとして、2005年に始めたイベントで、お客様の好みのオリジナルカラーのインクを作るイベントです。今は石丸さんと高橋さんのお二人のブレンダーがいらっしゃいますが、2019年に高橋さんがブレンダーになられるまでは、14年もの間、石丸さんが「インク工房」を育て上げて来られました。

 当店では2016年に初めてインク工房を開催させていただけることとなり、この時、初めて石丸さんとお会いしました。厳密に言うと、セーラー万年筆さんがまだ大阪で文房具店向けの展示会を開催しておられたもう少し前に、お会いしていたような気もするのですが、ゆっくりと色々とインクのお話をさせていただいたのは、2016年のインク工房の時が初めてだったと思います。まだ8年前ということが信じられません。もっともっと昔のような気がします。

 石丸さんとの思い出はたくさんありすぎて、全て話すと数日はかかりますが、何より思い出深いのは2020年、Covid-19が猛威を振い始めた年のインク工房です。2020年の春から日本においてもCovid-19が蔓延し始めて、いくつものイベントが中止になっていきました。そんな中、インク工房も例外ではなく、3月末の開催以降は中止が相次ぎ、7月の初旬に予定していた当店も中止かなと思われていたのですが、奇跡的にも緊急事態宣言が解除され、万全の対策での開催できる運びとなりました。そしてこの年、石丸さんと初めてInstagram Liveをさせて頂き、日曜日の朝にも関わらず、多くのみなさまにご視聴いただいたのを覚えています。

 そしてこの時に生まれたインクが、セーラー万年筆さんに作って頂く当店の新しいリーズ、Thanks Givingシリーズの「Daybreak」でした。Covid-19の蔓延により世界がどんよりとしてしまった中で、「明けない夜はない!」と信じて歩んでいきたいという思いを込めて、夜明けの紫の空をイメージして作って頂きました。そしてInstagram Liveの中で、いろんな紙に試し書きをしていった時、石丸さんから「バンクペーパー試してみて!」と言われて書いてみたのですが、書いた瞬間からみるみる色が変化していき、それを見ていたスタッフ全員が感嘆の声をあげたのを覚えています。

 このインクのシリーズ名をThanks Givingと名付けたのは、セーラー万年筆さん、そして石丸さんが作ってくださる場や体験に感謝を申し上げたいという意味と、お店やイベントに集まってくださるお客様に感謝を申し上げたいという意味を持たせたかったからです。こうしてDaybreakという伝説のインクが誕生し、このインクは発売前から注目が集まり、発売開始とともに注文が殺到し、当店でも異例のスピードで初回の生産分は完売となりました。この翌年作ったLuciferというインクも同じく今でも根強い人気で売れ続けています。

 インク工房というイベントは、私にとってインクに興味を持つ扉を開けてくれたと同時に、お店という場は作り手、お客様、そして我々お店スタッフがみんなで感動を作り上げていく場所なんだと教えてくれるイベントだと思います。これは一番最初のイベントの時から、今もなお変わらず私の心の中にある思いです。

 今年も石丸さんがイベントにご来店くださったのですが、今年もまた新たな素晴らしいインクが出来ました。その名も「Skyhigh」です。Covid-19以降の世界は、まだまだ回復が厳しい世界もあったり、世界の価値観が変わってしまったりで、2019年以前の状態と全く同じようには戻りません。そんな中、新しい扉を開けて、天高く羽ばたくように新たなことへの挑戦を続けていきたい、そんな思いを込めて「Skyhigh」と名付けました。

Daybreak、Luciferに次ぐ第三弾、Skyhighはまもなくご用意が整います。

みなさまお楽しみに。

 

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