ロングセラー水性ペンの元祖”ぺんてる サインペン”。その開発は苦難の連続だった!

みなさんこんにちは!
ナガサワ文具センターです。
今回は、”ぺんてる サインペン”をご紹介いたします

≪ぺんてる サインペン≫

文房具には商品名がそのまま総称となっている商品がたくさんあります。
今回ご紹介する”ぺんてる サインペン”もその一つ。
サインペンと聞いて”水性のペン”をみなさん連想されるのではないでしょうか?

ぺんてる サインペンは1963年された水性ペンの元祖です。
来年2023年で発売から60年目を迎えます。
しかし、今でこそ誰しもが知っているロングセラー商品ですが、サインペンの開発は苦難の連続でした。

ぺんてるにはそれまで油性ペンの”ぺんてるペン”があり、ペン先にアクリル繊維を用いた細字の油性ペンとして人気を博していました。
しかし消費者が使いにくいと思う欠点がありました。
それは…紙に書くと字が滲んでしまうこと、裏写りしてしまうこと。
油性ペンの特性ですので、当たり前と言えばそうなのですが、お客様からご指摘があったそうです。
そういった欠点を補う商品としてサインペンは開発されました。

まずはペン先の製造方法やインクを先端のペン先まで浸透させる方法が課題となりました。
ペン先はアクリル繊維を縦方向のものを厳選して固めることでクリア。
インクは”毛細管現象”という、繊維と繊維の”隙間”のような細い空間を、重力や上下左右に関係なく液体が浸透していく現象を利用してクリア。
しかし、外気温でインクが膨張してインクが漏れてくるという問題が起こります。
その問題もその先端近くに小さな穴を開ける事で外気圧とペン内部圧を平衡させることによってクリア。
このような数々の苦難を乗り越えサインペンは開発されました。

文字で書くと簡単なようですが、無いものを作っていた開発当時は大変な事だったと思います。

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≪初めはベージュだった≫

様々な苦難を乗り越えて開発されたサインペン。
しかし、売れ行きはあまり良くなかったそうです。

当初のボディカラーは、当時流行っていたベージュでした。
当初の発売カラーは黒・赤・青の3色。
尾栓(ペンの後端キャップ)のカラーをインクと同色にして区別していました。

現在のデザイン(ボディカラーがインクと同色)は、ある事がきっかけだったということです。
それは、ある製薬会社から2万本の注文が入ったが、本体カラーをインクと同じ色にするというのがその注文条件だったとのこと。
今までのベージュの樹脂はその時から尾栓に使用されるようになり、現在のデザインとなりました。

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≪ブレイクのきっかけは大統領?≫

現在のデザインとなってからも売れ行きはあまり良くなく、様々な販促活動をしていました。
その活動の中で、ぺんてるはサインペンの起死回生を狙います。
それはシカゴで行われた文具国際見本市に出展すること。

そこでサンプルとして配布していたサインペンを大統領報道官の手に渡り、それを見た当時のジョンソン大統領が使ってみたそうです。
するとジョンソン大統領はサインペンの書き味を気に入って24ダース(288本)も注文。
この話を耳にしたマスコミが新聞や雑誌で大きく取り上げ、”大統領が愛用する不思議なペン”として、あっという間に全米でサインペンが大ヒットしました。
(画像はぺんてる様からお借りしました)

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≪NASAが認めたサインペン≫

人気が出てきたサインペンですが、その人気にさらに拍車が掛かります。
毛細管現象を利用したサインペンは宇宙(無重力空間)でも使用可能だった為にNASAが”ジェミニ計画”で正式採用。
ジェミニ計画はNASAとして2度目の有人宇宙飛行計画で、次の”アポロ計画”に繋がっていく重要な計画です。
当時アメリカはソビエト連邦と宇宙開発競争を繰り広げていました。
そういったジェミニ計画でサインペンが”NASA公式ペン”として採用された為、注目度が上がりました。
(画像はぺんてる様からお借りしました)

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≪よく見ると…≫

サインペンのボディをよく見てみると、かなり拘った複雑なデザインである事が分かります。
よくある一般的な丸型ではなく、ペン先側から丸型→六角形と変化していきます。
これは、開発時に転がりにくさやフィット感、高級感などがコンセプトとしてあったからだそうです。
また真似されにくいデザインというのもあったようです。
開発当時のデザインが今もなお生き続けているというのは素晴らしいことですね。

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≪目立たない存在、だから素晴らしい≫

現代では決して商品として目立つ存在ではありません。
今はもっと機能的でデザインも新しい商品がたくさんあります。
でも必ず文房具店の売り場には並んでいる。
それだけ支持している方が必ず居られる商品だと言えます。
サインペンのボディにある、ボディと同色の控え目なロゴもそういう目で見ると素晴らしく見えます。
どんなシチュエーションでも使えるサインペン。 日本が世界に誇るロングセラー商品です。

 

 

 

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